2023.2.26  ガンガー(ガンジス)のガート

 バラナシ(ベナレス)で学会があり、アンドラ大のH先生が出席するとのことで、(学会はともかく)私も行きますといって合流させてもらった。

 バラナシといえば、インドのところですべての教科書にのっているであろうガンガー(ガンジス川)の沐浴で有名なところで、実はまだ行ったことがなかった。

 バラナシはウッタルプラデシュ州で、北インドである。もうドラビダ系のくるくるした文字はなくて、ヒンディー語と英語だけで、ヒンディーだけの看板も多い。日本人観光客がカモにされるのはデリーとかバラナシに決まっているので、インドの先生と一緒なら安心だし。

 (ヒンディー語しかないのでわからない;バラナシ駅)

 朝6時にホテルに迎えに来てもらう約束で待っているとなかなか来ないので、屋台の茶屋で茶を頼むと、素焼きのカップに入っている。使い捨てだが南インドではなかなか見られない。茶屋のおばちゃんはにこりともせず茶を渡してくれる。南インドだとここでにっこりなんだけどな。

 6時40分頃迎えの車が来て、先生方4名と合流。もう日が昇っちゃったよと思ったら、ガンジス川には行かず、学会会場のベナレスヒンドゥー大学(BHU)構内のお寺参り。その後学会会場で朝ご飯を食べて、約120km離れたPrayagraj (Allahabad)にむかった。Prayagというのは川の合流点で聖なる場所なのは12年前に学習した。

 (BHU大学構内のお寺)

 Prayagrajはガンガーとヤムナが合流する聖なる場所で、でも話を聞くとサラスヴァティを加えた三川合流の地だったらしい(大昔)。その後サラスヴァティは気候変動?で流路が代わり、西へ向かった。じゃあなぜバラナシが有名なんだろう。バラナシは仏陀初転法輪の地(サルナート)があり、ここもいくつかの川が合流していたらしい。これはたいへんだ(河道変遷の歴史を知りたいぞ)。

 Prayagrajに着くと、ヤムナ川側に船着き場があり、ここからボートで合流点へ行ってお参りするらしい。ヤムナ川は緑色で濁っており、ガンガーは透明で、しばらく混ざらずに流れるのがGoogle Earthでみえる。両方の水が合わさるあたりにボートが集まり、そこからガンガーに入って沐浴する場所になっている。

  (こちらはヤムナ川

 H先生は沐浴しないというので、ほかの方3名と一緒に川に入ってみた。膝上くらいの深さで、ズボンの裾をまくって入ってみると川底は砂で、ガンガーの水をピチャピチャ頭にかけてありがたやありがたや。すかさずデジカメ持ったお兄さんが来て撮影、1枚30ルピーだという。一体どこでプリントしてるんだ?

  (右側の人がすかさず写真を売りに来る)

 (お供えはヤムナ川に流した)

 このあたりのガンガーはまだ網状流路で河床は砂で浅く、一方ヤムナ川は蛇行流路で河岸は泥っぽい。沐浴とか水をボトルに詰めて持って帰るのはガンガーの方で納得した(自分は12年前に源流のガンゴトリで水をくんだのでここはいいや)。

 

 翌朝はバラナシのガート(沐浴場)を先生方と一緒に船から見学したが、ヤムナ川と合流したあとなので泥っぽかった。焼き場が2箇所くらいあり薪が積み上げられていたが、最近は遺灰のみ流すことができ、ご遺体は流しちゃいけなくなったそうだ。昔のガイドブックなどでは、沐浴するそばにご遺体が流れている、みたいな話があったけど、ガンガーの水浄化計画プロジェクトとかも(日本の援助で)やっているらしい。

  

 

 BHUでは結局時間がなくて学会の登録料を払っただけですぐにタクシーで空港に向かったが、渋滞がひどく空港のチェックインに間に合わなかった。何しろガンガーで沐浴したのでそこは少しもあわてず、次の便のチケットを買い直し、ベンガルールに向かった。

 (BHU地理学教室)

 (新興LCCなかなかよかった)

 

2023.2.25 ポリスの弁当 

 ベンガルールからバラナシへ飛行機で行こうとしたら、ベンガルールの空港の手荷物検査でとめられた。「これは何ですか」「GPSです」「GPSのインド持ち込みは御法度です」しまった~。

 これまではスーツケースに入れていたのでセーフだったが、今回LCCでスーツケースの重量制限があり電気製品を全部手荷物に入れたのがいけなかった。

 (ベンガルール空港)

 セキュリティポリスの責任者みたいな女性係官のところへ連れて行かれ、パスポートと搭乗券を取りあげられた。何だかたくさん書類を作成している。さらに、「あやまって手荷物に入れて持ち込みました」という反省文を書かされた。これですむのかと思ったら大間違いで、搭乗券に「キャンセル」のスタンプを押され、スーツケースを返されて、ポリスの付き添いで空港の建物の外のセキュリティポリスに連れて行かれた。

  (セキュリティポリスの建物)

 ここでも係官に取り調べを受け、「GPSの持ち込みは違法だ」と言われた(今はどのスマホにも付いているのに)。何で普通のツーリストがGPSをもっているのか怪しまれたようで、Geographerです、といったら少し納得したようだった。

 (詳細は略すが)GPS没収の上釈放された。係官が「昼食は食べたのか」というので「まだです」といったら、弁当を食べさせてくれた。警察の取調室でかつ丼を食べさせてもらったような感じだ。

 (ポリスの取調室で弁当)

 航空券を買い直して無事バラナシに着いた。これだからインドはたまらない。

2023.2.24 インドの世界遺産も

 これまでなかなか行かれなかったカルナタカ州のハンピとパッタダカルを訪問した。両方ともユネスコ世界文化遺産である。ハイデラバード(テランガナ州)からもベンガルールからも車で半日以上かかるため行きそびれていた。

 ベンガルールから3泊4日で両方の遺跡を見学するツアーに申し込んだ。今回も参加者1名のプライベートツアーだ。

 初日の昼過ぎにハンピの近くの宿につき、早速遺跡見学と思ったら、野生のクマの保護区でサファリツアーがパッケージになっていると言われ、喜んで参加した。花崗岩の残丘とブッシュの広がるところで、岩山の上の展望台から子連れのクマが2組見られた。他にもクジャクとかインドワシミミズクとかもいた。

  (野生のクマの保護区)

 (インドワシミミズク

 

 翌日は実は午前中オンライン会議があり、ハンピは午後の半日で早回り。世界遺産「ハンピの建造物群」は、14−16世紀のヒンドゥー王国のビジャヤナガルの都だったところで、イスラム王朝により滅ぼされた。王宮は木造だったため残っていないが、寺院は花崗岩の彫刻がすごい。

  

  (ハンピ)

 

 3日目はバダミという別の遺跡に行ったが、ここもすごい迫力で世界遺産になってないのが不思議なくらい(登録準備中)。こちらは花崗岩じゃなくて赤色砂岩の絶壁に石窟寺院や石造寺院が集まっている。デンバーで行ったレッドロックみたいなところだ。4−8世紀のチャールキヤ王国の都だったらしい。石窟寺院はシヴァ神を祀るのが1つとヴィシュヌ神を祀るのが2つとジャイナ教が1つ、岩山に取り囲まれた貯水池に面した石造寺院もタミルナドゥ州のマハバリプラムみたいな感じで素晴らしい。高校の歴史の先生をしている方がガイドをしてくださった。

  

  (バダミ)

 

 最終日にパッタダカルとアイホーレに行ったが、この日のガイドさんはすごく詳しく説明してくれて、カンボジア以来の疑問のいくつかがわかった気がした。彼によれば、例えばシヴァ神を祀る寺院は、ナンディン(聖なる牛)、門衛、ガンガー神とヤムナ神、リンガとヨニが全部そろっていないと意味がなくて、どれか欠けていると信仰の対象にならないそうだ(だから遺跡の寺院はみんなお参りしないのか)。

 世界遺産「パッタダカルの建造物群」は、ハンピと違い狭い範囲に寺院群が集中しているが、北インド様式と南インド様式と融合様式と、7−8世紀の寺院建築のショールームみたいなところだ。カンボジアのサンボープレイクックはどうもインドと違う感じがしていたけれど、いろんなパーツはインド直輸入だったんだなと思った。

  

  (パッタダカル)

 

 アイホーレも5-8世紀の寺院建築が集まっているところで、U字形の平面形のドゥルガ寺院は仏教建築の影響だそうだ。

 (ドゥルガ寺院、7-8世紀)

 

 これでインド国内の世界遺産計38箇所中17箇所訪問。インドは広い割に世界遺産が少ない。

2023.2.20 ベンガルールのメトロ

 チェンナイからインドのシリコンバレー(もう死語でしょ)、ベンガルール(バンガロール)へ移動。ベンガルールはモダンな都市で、女性も洋装の人が多い。メトロにでも乗ってみよう(過去にデリーやコルカタでも乗ったけどチェンナイのメトロは見ただけ)。

 ホテルの近くの駅からとりあえず中心部のMajesticまで5駅、緑色のラインと紫色のラインの2線あり、Majestic駅で交差している。窓口で切符を買うと片道20ルピーくらいだったか、トークンを渡された。

 (千葉モノレールみたい)

 周辺部はやたら高い高架線になっているが(ホームまではエスカレーターあり)、途中から地下鉄になる。

 

 Majestic駅で降りると、夕方のラッシュでかなり混雑している。

  (駅前に牛もいる)

 インド国鉄ベンガルール駅がすぐそばなので行ってみた。裏口の方から入ってしまい、さびしい駅だと思ったら大間違い、立派な駅でした。

  (ベンガルール駅)

 寝台車が接続された列車がいたので行先を見たら、デリー~ベンガルール~チェンナイという長距離列車(走行約2000km)だったが、アメリカで乗った大陸横断鉄道(サンフランシスコ~シカゴ、カリフォルニアゼファー号)は約4000kmなので、たいしたことないぞ(そんなら乗ってみろ)!

 

 インド鉄道の旅もしたかったな。

2023.2.19 インドただいま~

 スリランカを離れるときは何だか名残惜しかったが、インド、タミルナドゥ州のチェンナイ空港に着くと、ターミナルが新しくなったようだ。

 期待していたら新ターミナルは国内線用で、国際線は10年前と同じ情けないターミナルのままだった。出口には両替屋が1軒とプリペイドタクシーのカウンターがあるだけで、もちろんSIMカードなんか売ってない。

  (外に出ても何もない)

 市内まではさっそく車線無視、クラクションならし放題のインドの道路事情に戻り、ホテルに着いて近所を散歩すれば道路はゴミだらけで犬とか牛とかもいるけど、立ち飲みスタンドみたいなお店で紅茶を飲んだら10ルピー(15円くらい)で何だかほっとしている自分に気づいた。

 

 マリナビーチが近いのでいってみると夕涼み?の人で大混雑。人でいっぱいの地下道を通って海岸側に出ると、ポリスはいるわドローンは飛んでいるわ、食べものやおもちゃ屋の屋台が両側にずらりと並び、巡回用回転木馬や綱渡り芸人や(でました)インコ占いのおじさんも久しぶり。 

 (名門マドラス大学の前はビーチ) 

   (インコがカードをめくって占ってくれる)

 南インド第一の都市チェンナイ、相変わらずだぞ。

 

2023.2.17 スリランカ中央高地

 スリランカの地質はほとんどが花崗岩や片麻岩などのようだが、中央部の高原地帯は堆積岩っぽくて厚い風化皮膜が発達している。地質の差なのか地形の差なのか不明。

 (St. Clair滝)

 中央高地の標高1000m以上の地域は茶畑が広がり、セイロン紅茶の産地である。紅茶工場でゴールデンチップ、白茶、緑茶、BOP(ブロークンオレンジペコ)をテイストさせてもらったが、BOP以外はお湯みたいで話にならない。狭山茶を飲ませてやりたい。

 

 世界遺産3日間ツアーに続き、中央高地のアダムスピーク(スリパダ、2243m)登頂ツアーも申し込んだ。何でアダムスピークかというと、山頂の岩に足跡のようなくぼみがあり、仏教徒仏陀の、ヒンドゥー教徒シヴァ神の、イスラム教徒はアダムの、キリスト教徒は聖トーマスの、それぞれ聖なる足跡(Sri Pada)とされているからだそうだ。

 コロンボから中央高地のヌワラエリヤまで行き1泊。翌日夜に登って山頂でご来光を拝んで下るというプランである。標高差約1000m、登山道というよりは巡礼地で階段を登るらしい。

 (ヌワラエリヤの郵便局)

 ちなみにスリランカの最高峰はアダムスピークではなくて、ヌワラエリヤの裏山のPidurutalagala山(2524m)で、ネットで山頂まで車で行けると書いてあったので、ガイドさんに頼んで行ってもらったが、山頂部は軍のレーダー基地でゲートがあり入っちゃだめと言われ、あえなく敗退(以前は入れたようだが現在はダメみたいだった)。

   (スリランカ最高峰はアンテナ林立)

 夜、スリパダ登山口のNallathanniyaまで行くと、ものすごい数のバスが集まっている。参道は両側にお土産屋さんがならびアメ横のようだが、学校が休暇中で人出は最高、夏休みの富士登山明治神宮の初詣をあわせたような状況だ。

 

 ガイドさんと合流して20時スタート。ここに来る人全員が狭い山頂をめざす訳なので、当然途中からどんどん渋滞がひどくなり、23時頃からもう動かなくなる。朝のラッシュ時の埼京線車内くらいの混雑(まわりはすべて人と接触している状態)で、立ったままほとんど進まない。おまけに皆マスクなんかしてない。東京でも雑踏が嫌で近寄らないようにしているのに、身動きのできない混雑で気が狂いそう。

   

 昨年(2022年)の韓国のソウル梨泰院での群集事故を思い出し恐怖を感じたが、スリランカの人は下りの人の通り道を1列分開けて、押さずにじっと待っている。インドだったら押し合いへし合いでたぶん将棋倒しになるだろう。

 夜中の2時50分、7合目位の茶屋にやっと入れたが、ガイドさんが茶屋の人にきくと、あと数時間動かないだろうという。どうしますかというのでもうこれ以上行かず引き返すことにした。残念だけれどこの混雑は耐えられない。ガイドさんもこんなに混むのははじめてという。

 (茶屋の前の渋滞)

 3時下山開始で登山口着が5時30分、まだ夜明け前なので、ここで日の出を待つことにした。山頂まで参道の照明が見え、山頂には大きな建物が見える。6時30分、山頂が朝日に照らされモルゲンロート、雲一つない快晴。あ~あ、残念でした。

 

 ネットでは12月から4月までが参拝シーズンで、シーズン後半は混雑するので12月がおすすめと書いてあった。ちなみにスリパダは世界自然遺産スリランカ中央高地」の一部なので、世界遺産は8箇所中6箇所制覇。

 (GPSのトラック)

 

2023.2.14 スリランカの世界遺産

 スリランカには世界文化遺産が6件と世界自然遺産が2件登録されている(計8箇所はベトナムと同じ、タイは6箇所、カンボジアは3箇所)。 

 UNESCO世界遺産リスト https://whc.unesco.org/ja/list/?iso=lk&search=&

 経済危機でどうなっているのかよくわからなかったので、とりあえず現地発着の見学ツアー(5つのユネスコ世界遺産・3日間)を申し込んだ。 

 ガイドさんが自らの車を運転して迎えに来たが、参加者は1人だけなのでプライベートツアーだ(やった!)。

・聖地アヌラーダプラ:BC4~AD10世紀頃のシンハラ王国の都。BC3世紀にインドのブッダガヤから菩提樹の枝を持ち帰ったらしい。裸足で仏塔を一周、石が熱いよー。

  

 

古代都市シギリヤ:比高約200mの岩山で、もと仏教僧院だったが5世紀に一時王宮がつくられた。岩壁画の「シギリヤレディ」が有名。ユネスコのサイトでは「花崗岩」と書いてあるけれど、片麻岩だと思う。

  

 

・古代都市ポロンナルワ:11~13世紀のシンハラ王朝の都。ちょうどカンボジアのアンコール王朝と同じ頃で、アンコール遺跡群みたい(ただしこっちは仏教オンリー)。

  

 カンボジアのサンボープレイクック遺跡(7世紀)のルーツがインドではなかなかみつからなくて、時代は少しずれるけれどこっちのほうが近いのかもしれない。

 

・ミンネリヤ国立公園:世界遺産じゃないけれど、野生のゾウがたくさんいる。子連れの群れを20台近くのジープが取り囲んで記念撮影。

  (クジャクもいる)

 

・ダンブッラの黄金寺院:BC1世紀~20世紀の石窟寺院群。1~5窟まであり、涅槃仏はじめ157の仏像と壁画がきれい。一箇所だけヒンドゥー教ヴィシュヌ神もまつられている。アジャンター石窟よりはだいぶ小さい。写真撮り放題。

 

 

・聖地キャンディ:16世紀~18世紀のシンハラ王朝最後の都。仏歯をまつる仏歯寺がある。

  (この中に仏歯がまつられている)

 スリランカの歴代の都は代々外国(インド、ポルトガル、オランダ、イギリス)の侵略をうけてきたため、内陸にあるということか。コロンボは海岸にあり中国の「一帯一路」に取り込まれているし(現在の首都はコロンボの一部?のスリジャヤワルダナプラコッテ)。

 

 ガイドさんはコロナで2年間休業、トヨタの車(アリオン)も売り払い、ホンダのフィットで今回久しぶりの仕事だったらしい。ハイブリッド車は燃費がいいので人気だそうだ。ローソンとか引越のサカイのトラックも(たまに)走っている。バスやワゴン車には謎の日本語がわざと書いてある。

 (「最大積載量最大」)