2022.7.27 ヘント

 パリからブリュッセルに戻り、電車で30分くらいのところのGent(ヘント)を訪問した。ここはフランドルなのでオランダ語地域で、ヘントは英語ではゲントGhent、フランス語ではガンGandでめんどうくさい。

 ブリュッセルに来てから思い出して、ヘント大学(名誉教授)のH先生にメールしてみたらお返事が来て、ヘントにいらっしゃいと言ってくださった。しかし7月15日から24日はお祭りで大混雑なので、終わってから来なさいとのことだった。なのでお祭りが終わってから訪問した。

 H先生が車で駅まで迎えに来てくれて、大学の駐車場に車を停めて徒歩で見学。ヘントはスヘルデSchelde川とレイエLeie川が合流する場所で、運河も作られ物流の拠点だった。

 

 市の中心部の聖バーフBaaf大聖堂には、15世紀にヴァンアイク Van Eyck兄弟により描かれた「神の子羊」という有名な祭壇画があり(知らなかったけど前日にネットで調べた)拝観した。聖バーフって初めて聞いたけど、(現在の)ベルギー出身の聖人らしい。

  (聖バーフ大聖堂の祭壇画「神の子羊」)

 レイエ川の橋の上から、聖バーフ大聖堂の塔と世界遺産の鐘楼と聖ニコラス教会の塔の3つが並ぶのが見え、近くにはフランドル伯居城という中世のお城もある。川に面したお店で200g位はあろうかというステーキのランチ(どんぶりいっぱいのフライドポテト付き)をごちそうになり、おなかいっぱい。 

 

 午後はボートツアー(40分)、ガイドさんはオランダ語とフランス語と英語で早口でしゃべり続けていた。東京の日本橋川クルーズみたいな感じで、水上から見る町はおもしろかった。

 

 ところで、2つの川が合流するほかに運河がたくさんあって、どっちが上流でどっちが下流だかわからなくなった。北側に北海へ続く港があるので、「ヘントは潮汐の影響はあるのですか」と聞いたが、H先生の答えは「ない」、ヘントの東側のスヘルデ川までだそうだ。あれ、そっちが下流なの?

 南西から来るレイエ川と、南から来るスヘルデ川がヘントで合流したあと、東へ流れてアントウェルペンへ向かうので、まだ海から遠いのだった。北側の港は運河で、水門や閘門で区切られており、ヘントの川は淡水だった。

 最後に、H先生が作成した地形分類図を見せてくださった。空中写真判読ではなく、すべて現地を歩いて作成したそうで、南側は丘陵、北側は北海沿いの低地で、ヘントの周辺は低い台地と東西方向の(氷河時代の)谷があり、谷の中には浜堤や砂丘などが分布し、かなり複雑だった。

 (これはベルギー北部の25万分の1第四紀地質図、ヘントは真ん中へんの青と白の交差するところ)

 先生の1970年代の露頭スケッチでは、最下部に基盤岩、その上にエーミアン(最終間氷期)の海成層、その上にヴァイクゼリアン(最終氷期)の河成堆積物、最上部に完新世の泥炭層が描かれていた。なぜエーミアンの上にヴァイクゼリアンなのと思って聞いたら、全体がもう一つ前のリス氷期の谷だったのだそうだ(間氷期氷期の名前はややクラシックですが)。これらを出版して記録に残さないと、ヘントの地形や地質について書かれたものがないのでまだまだ続ける、と79歳のH先生は意気軒昂だった。

 (ヘント・シント・ピーテルス駅)